5月 中東AI関連ニュースまとめ

アブダビのTIIが新しいGenAIモデル「Falcon 2」シリーズを発表

アラブ首長国連邦（UAE）のアブダビに位置するテクノロジーイノベーション研究所（TII）は、新たなGenAIモデルシリーズ「Falcon 2」を発表しました。この新シリーズには、テキストベースの「Falcon 2 11B」と、画像のテキスト説明を生成する能力を持つ「Falcon 2 11B VLM」という二つのモデルが含まれています。これらはいずれもオープンソースで提供され、広範囲にわたるアプリケーションへの活用が期待されています。

先進国としてのUAEの野望と取り組み

UAEは、石油輸出で知られる中東の重要国でありながら、近年は人工知能（AI）をはじめとした先端技術に対する投資を大幅に強化しています。TIIは、アブダビの先端技術研究評議会内に設立された研究センターであり、この地域の技術力向上を牽引しています。

ファイサル・アル・バンナイ事務総長は「UAEが人工知能分野で主要なプレーヤーとなることを実証している」と述べ、国際的な競争においてUAEの地位を高める意欲を示しました。アル・バンナイ事務総長はまた、「Falcon 3」シリーズの開発にも既に着手しており、その楽観的な見通しを示しています。

オープンソースとしてのアプローチ

「Falcon 2」の公開は、AI技術の独占を避け、幅広い開発者との協力を促進する狙いがあります。この戦略により、AIの民主化が推進され、世界中の企業や研究者が容易にアクセスできるようになります。OpenAIのChatGPTやMetaのLlamaといった他の大手技術企業も同様のアプローチを採用しており、それによって技術的進歩が加速していることから、TIIの戦略は非常に時宜を得たものと言えるでしょう。

競争と革新の未来

「Falcon 2」シリーズは、国際的なAI技術のレースにおいてUAEを一層前進させるものと期待されています。アル・バンナイ事務総長の言葉にもあるように、UAEは「自分たちの体重をはるかに超えるパンチを出せる」能力を持ち、世界の最高のプレーヤーたちとの真剣な競争に挑んでいます。これからもUAEのAI分野における更なる成果に注目が集まることでしょう。

アブダビのPresight、AIQを買収しエネルギー業界のAIイノベーションを加速

アブダビに拠点を置くプレサイトが、AIQの経営権を取得したことを発表しました。AIQは、ADNOCとG42が共同で2020年に設立した「AI for Energy」の合弁事業であり、この買収はPresightにとってエネルギー分野への革新的な拡張を意味します。

AIとエネルギー業界の統合

この契約により、PresightはAIQが持つAIエネルギーソリューションと、ビッグデータ分析、生成AI、スーパーコンピューティングの分野でのPresightの専門知識を組み合わせることができます。これにより、国営石油ガス会社ADNOCの卓越した地位をさらに活用し、業界に革新をもたらす強力な基盤が形成されます。

収益性と革新の促進

PresightとADNOCの間のこの戦略的な動きは、大幅な増収収益の機会をもたらし、Presightの株主に対して高い付加価値を提供することが期待されます。特に、AIQは2022年から2023年にかけて60%以上の驚異的な収益成長を遂げており、20件を超える出願と16件以上の特許取得されたAIツールにより、その成長を実現しました。これらのツールはADNOCの運営効率を向上させ、同社の市場価値を高めるために貢献しています。

経営陣の展望

PresightのCEOであるThomas Pramotedham氏は、「当社のAIQ買収は、当社のソリューションポートフォリオを拡大する当社の戦略と一致しており、AI技術を活用してより安全で、健康で、幸せで、持続可能な社会を創造することを目指しています」と述べています。また、Presight会長のマンスール・アル・マンスーリ氏は、「ADNOCの力を背景にエネルギー分野でのAIソリューションの開発を加速できることに興奮している」と語りました。

株式とパートナーシップの配置

契約の一環として、ADNOCはAIQの49%の株式を保持し続け、Presightの株主としての地位も確立しました。このパートナーシップは、両社の強みを生かし、エネルギー分野での革新的なAIソリューションの開発を促進するためのものです。

この買収は、AI技術の活用と産業ソリューションの先端を行く動きとして、今後のエネルギー業界の発展に大きな影響を与えることでしょう。

テザーとRAK DAO、ラスアルハイマでビットコインとステーブルコインの普及を推進

世界最大のステーブルコインであるテザーが、アラブ首長国連邦（UAE）のラスアルハイマにおけるビットコインとステーブルコインの普及を目指し、RAKデジタルアセットオアシス（DAO）との新たな提携を発表しました。この動きは、地域内でのデジタル通貨の採用を加速することを目的としています。

暗号通貨普及のための戦略的パートナーシップ

テザーとRAK DAOは、この提携を通じて、ラスアルハイマでの暗号通貨決済の導入を促進するとともに、ブロックチェーン技術に焦点を当てた教育プログラムを設計します。この教育プログラムは、地域住民と事業者に対して、デジタル通貨の知識を広め、安全な使用を促進することを目的としています。

テザーEduとの教育取り組み

テザーは、最近設立された教育部門「Tether Edu」を通じて、ビットコイン、ブロックチェーン、ピアツーピア技術、ステーブルコインの導入、および仮想通貨の実世界での使用例に関する個人向けの教育プログラムを開発します。これらのプログラムは、テクノロジーの理解を深めることで、地域社会のデジタル通貨採用をさらに促進することを目指しています。

チェイナリシスとの協力

さらに、テザーはブロックチェーンデータプラットフォームのチェイナリシスと協力して、流通市場の活動を監視するためのカスタマイズ可能なソリューションを開発しました。この取り組みは、違法金融に対抗し、仮想通貨市場でのトークン使用方法の監視を強化することを目的としています。

期待される影響

この提携と教育取り組みにより、ラスアルハイマではデジタル通貨の安全な使用と理解が促進されることが期待されます。また、テザーとRAK DAOの戦略的な協力関係は、地域全体のデジタル経済の成長に貢献する可能性があります。これにより、ラスアルハイマが中東地域でのデジタル通貨とブロックチェーン技術のハブとしての地位を固めることにつながるかもしれません。

JAIS Chat: UAEから新たなアラビア語大言語モデルが世界デビュー

アブダビに本拠を置くG42の関連企業であるCore42が、先進的なアラビア語大言語モデル（LLM）「JAIS Chat」をリリースしました。このモバイルアプリは、アラビア語を話す全世界の4億人以上のユーザーに向けて、高度なジェネレーティブAI機能を提供します。

世界中のアラビア語ユーザー向けの画期的なチャットボット

JAIS Chatは、iOSでダウンロード可能なユーザーフレンドリーなアプリケーションとして設計されており、アラビア語と英語のバイリンガル対応が可能です。このチャットボットは複数のアラビア語方言や文化的ニュアンスを理解し、大規模な翻訳と言語横断的なコミュニケーションを促進することで、アラビア語話者の日常生活に便利さと効率性をもたらします。

革新的な技術基盤とその能力

JAIS Chatは、「JAIS 30B」というパワフルなモデルに基づいており、1,260億のアラビア語トークン、2,510億の英語トークン、および500億のコードトークンで構成される広範なデータセットで訓練されています。これにより、アラビア語の処理と精度において類稀な結果をもたらし、英語処理においても同様に優れたパフォーマンスを実現します。

JAIS Chatの応用範囲と未来への展望

Core42の副社長兼最高AIオフィサーであるアンドリュー・ジャクソン氏によると、「JAIS Chatは、アラビア語ファーストのアプローチで、バイリンガルの個人がテクノロジーと対話する方法を再構築しています。」また、このアプリは政府通信の強化、顧客サービスの自動化の改善、さまざまなセクターでの従業員のサポートに大きな可能性を提供します。

JAIS Chatのユニークな特徴

このアプリケーションは、生成AIパワーを利用して要約、コンテンツ生成、情報検索を可能にし、今後のアップデートでドキュメント処理、カスタマイズ可能なユーザー設定、音声会話機能など、さらに高度な企業向け機能を提供する予定です。

JAIS Chatの登場は、中東地域のAI環境において重要な進歩を示すとともに、アラビア語を母国語とするユーザーに対するAIアクセスを大きく広げる一歩となります。

カタール、AI向けに24.7億ドルのインセンティブパッケージを発表

カタール政府は、アラビア語の高品質データに基づくアラブ人工知能プロジェクトを開始し、デジタル変革への一層の投資として、24.7億ドル（約9億カタールリヤル）のインセンティブパッケージを割り当てました。

カタール経済フォーラムでの発表

この発表は、カタールの首相兼外務大臣であるシェイク・モハメド・ビン・アブドゥルラーマン・ビン・ジャシム・アル・ターニによって、カタール経済フォーラム（QEF）の開幕スピーチで行われました。フォーラムは、世界中から1000人以上のビジネスリーダーが参加する中、「A World Remade: Navigating the Year of Uncertainty」というテーマのもと、5月14日から16日までドーハのカタラタワーズ：フェアモントドーハおよびラッフルズドーハホテルで開催されます。

アラブ人工知能プロジェクトの意義

首相は、「このプロジェクトは、大規模アラブモデルを豊かにし、アラブのアイデンティティを保持することに貢献する」と述べ、AIとイノベーションへの投資を通じて包括的なデジタル変革を目指すカタールの方針を強調しました。アラブ人工知能プロジェクトは、アラビア語の高品質なデータを基盤としており、地域全体の技術進歩に対する大きなステップを象徴しています。

投資と市場の展望

さらに、首相は新興市場への投資拡大を続けると確認し、地元市場では民間セクターの機会を開くための取り組みを強化すると述べました。このフォーラムでは、政治地理学、グローバリゼーションと貿易、エネルギー移行、技術革新、ビジネスおよび投資の展望、スポーツ、エンターテインメントなど、さまざまな主要分野に関する議論が行われる予定です。

このようにカタールは、AIと技術革新を核とした未来への大胆な一歩を踏み出し、地域および世界のデジタル経済におけるリーダーシップを確立することを目指しています。

スイス投資家コンソーシアム、UAEにおいて1億ドルのAI投資ファンドを立ち上げ

アブダビにおいて、スイス投資家コンソーシアムBRICS投資ファンドが、新たにAI専用の投資ファンドを設立しました。このファンドは、合計で138億CHF（スイスフラン）の資産を管理しており、家族経営のオフィス、機関投資家、主要な銀行、および個人投資家で構成されています。

AI分野への大規模投資

BRICS投資ファンドは、初期資本として1億ドルをコミットし、UAEの人工知能（AI）成長の潜在能力への投資を目指しています。この投資は、成長企業やイニシアチブへの投資を促進し、外国直接投資（FDI）の機会と戦略的パートナーシップを育成することを目的としています。

投資家を繋ぐプラットフォーム

この取り組みの一環として、コンソーシアムはアニュアル・インベストメント・ミーティング（AIM）との戦略的パートナーシップを締結しました。AIMは、UAEでの投資開発について話し合う主要なプラットフォームとして機能しています。

四次産業革命の推進者との協力

また、四次産業革命の起源者であり、AIハイパーサイクルのアナウンサーであるヘンリック・フォン・シェール教授は、UAE AI投資ファンドおよびその実施をサポートするための独占的な合意に署名しました。

NEXT ITの役割

「AIは知能の自動化であり、UAEから世界への影響をもたらすために目的を持って適用される必要がある」と、NEXT ITのCEOスポークスパーソンであるH.E. Shaik Hamdanは述べています。NEXT ITは2011年に設立された技術会社で、中東の様々な産業で幅広いクライアントを持っています。同社は、ウェブサイトやアプリケーションの更新、管理されたITサービス、緊急時のサポートなど、ビジネス向けのカスタマイズされた技術ソリューションを提供しています。

さまざまな産業への技術提供

NEXT IT & Systemsは、ソフトウェア開発、ビジネスインテリジェンス、ソフトウェア統合サービスを提供し、クライアントの業務を効率化し、成功を促進することを目指しています。同社はスタートアップ、非営利組織、中堅企業、大企業にサービスを提供し、エンジニアリング、建設、石油・ガス、技術、健康、旅行、金融などの分野で活動しています。

この新しいAI投資ファンドは、UAEのAI産業のさらなる成長とイノベーションを促進し、地域全体のテクノロジー進化に貢献することが期待されています。

EzditekとGcoreが提携し、サウジアラビアのAIインフラを強化

サウジアラビアのデータセンターおよびデジタルインフラストラクチャサービス会社であるEzditekは、ルクセンブルクに本社を置くエッジAI、クラウド、セキュリティソリューションプロバイダーのGcoreと覚書（MoU）を締結しました。この提携は、サウジアラビア王国（KSA）内でAIビジネスを支援し、高容量インフラの設置を目指します。Ezditekは、今後5年間でリヤド、ジェッダ、ダンマンの各都市に分散する9つのデータセンターを通じてAI/GPUコンピューティングの容量を提供する計画を発表しました。

サウジアラビア全域にわたる高容量データセンター

この合意のもと、EzditekはGcoreの専門知識を活用して、リヤド、ジェッダ、ダンマンの9つのデータセンターに高容量インフラを設置します。これは、地域におけるAIコンピューティングの需要の増加に対応するためです。

EzditekのCEO、イブラヒム・アルムルヒム氏は、「Gcoreとのパートナーシップは、AI時代の進化する要求に対応する柔軟で高度にスケーラブルな施設を提供する旅の重要なマイルストーンです。当社のMoU合意は、大量のデータを管理するために設計されたキャリアニュートラルなデータセンターを開発するにあたって、エキサイティングな一歩を表しています」と述べています。「共に、我々はサービスとしてのAIを提供し、KSA全域にわたるよりスマートで持続可能なデータセンターイノベーションの次の波を推進しています。」

2025年までに28MWの容量を運用

この提携は、2025年までに28MWの運用容量を目標としており、その後の4年間で段階的に拡大する計画です。Gcoreのチーフリベニューオフィサー、ファブリス・モイザン氏もアルムルヒム氏の感想に同意し、このコラボレーションの変革的な可能性を強調しました。

Ezditek（エズディハル・ホールディング・カンパニーの子会社）は、2030年までにサウジの主要都市に複数の大規模データセンターを設立することを目指しています。これらのキャリアニュートラルなハブは、公式リリースによると、サウジビジョン2030の長期ビジョンを支援するように設計されています。

カタール中央銀行、AI導入ガイドラインを数週間内に発行予定

カタール中央銀行（QCB）の総裁であるシェイク・バンダル・ビン・モハメッド・ビン・サウード・アル＝サーニ氏は、国内の金融機関が人工知能（AI）を適切に導入し、リスクを管理するための初のガイドラインを数週間内に発行する予定であると発表しました。これにより、データ、AI、リスクモデリングの管理枠組みが将来的に整備される可能性があります。

AI導入のための規制フレームワーク

シェイク・バンダル氏は、「規制は非常に重要であり、これが金融機関がAIを適切に活用し、リスクを軽減するのに役立つ」と述べ、現在ガイドラインの策定を進めていることを明らかにしました。金融機関への諮問書として送付されたこれらのガイドラインは、金融機関からのフィードバックを基に最終化される予定です。

パネルセッションでの発言

カタール経済フォーラムでの「人工知能と銀行業務の再発明」パネルセッションに参加したシェイク・バンダル氏は、AIのリスクに対する懸念も表明しました。特にサイバー攻撃や技術の悪用、データプライバシー、偏ったデータ、市場操作が主な懸念事項です。

AIの経済的影響について

シェイク・バンダル氏は、AIが中長期的にはインフレ抑制に寄与するとの見解を示しましたが、短期的には教育機関が新技術に投資することによるコスト増加がインフレに若干の影響を及ぼす可能性があると述べています。

金利政策と通貨固定について

カタールの通貨政策としてリヤルを米ドルに固定し続ける方針を再確認し、これが中央銀行の主な任務であると強調しました。また、国内外のインフレ状況にも言及し、米国とヨーロッパのインフレ状況を比較しながら、金利が高水準に留まる可能性があるとの見解を示しました。

これらの動きは、カタールがAIとその他の新技術を金融業界にどのように統合し、利用していくか、そしてそれが全体的な経済政策にどのように影響を与えるかに大きな注目が集まっています。

リヤド、9月に国際的なグローバルAIサミットを開催予定

サウジアラビアの首都リヤドで、9月10日から12日までの3日間、第3回グローバルAIサミットが開催されます。このサミットは、サウジデータ人工知能局（SDAIA）の主催で、キング・アブドゥルアズィズ国際会議センターで行われることがサウジ通信社によって報じられました。

サミットの概要

グローバルAIサミットは、国際閣僚、組織の長、大手テクノロジー企業のCEO、AI専門家など、世界中の有力者が一堂に会するイベントです。参加者は、最新のAIイノベーション、業界のトレンド、およびAIの未来に向けた人材育成など、様々なテーマについて議論を交わします。

サウジビジョン2030への貢献

SDAIAの会長であるアブドラ・アル・ガムディは、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の国家データと人工知能に対する献身的な取り組みを強調しました。このサミットは、サウジアラビアがデータとAIの分野で国際的な存在感を示す場となり、ビジョン2030の一環としてリヤドをAI開発の世界的中心地として位置づけることを目指しています。